WORLD END ECONOMiCA episode.1 :★★★★★
『狼と香辛料』を楽しめた人なら絶対に面白い作品
紹介
WORLD END ECONOMiCAは『狼と香辛料』でおなじみの支倉凍砂氏が立ち上げた同人サークル「Spicy Tails」によって発表されたノベルゲーム。ゲームスタイルは一般的なADV形式ですが、選択肢は存在せず立ち絵とイベントCGで一本道のシナリオを読み進めていきます。なのでゲームと言うよりはデジタルノベルと呼んだほうが良いのかも。
月に人が住むようになり月の裏側まで探査され尽くされた世界、そんな世界の中で前人未踏の地を求める主人公。そんな主人公「ハル」が資金稼ぎの手段として選らんがのが「株式市場」。家を飛び出しデイトレードのセンスを駆使して着実に数字を膨らましていたハルだったが家出故に警察に見つかると家に連れ戻されてしまう。そこで教会を運営する里沙に匿ってもらうのだが教会には先客がいた。黒髪で黒い上着、黒いスカートに黒いストッキング(実に素晴らしい!)という黒ずくめの少女「ハガナ」と出会う。
まぁ詳しくは公式サイトか体験版でもやっていただくのが早いかと。
ちょっとした感想
プレイ時間は約7〜8時間、テキストじっくり読んでも10時間は超えないはず。
物語はさすが支倉氏といったところ。狼と香辛料でも見せたお金と物語の絡め方が非常に秀逸。株取引、デイトレード、そして金融工学。ディスプレイとにらめっこして数字を増やすのは果たして労働なのか、労働だけが金を得る手段なのか、お金に対する視点がとてもニュートラル。
物語の展開も緩急の付け方が素晴らしく全くダレることなく、中盤以降のシナリオはまさに手に汗を握る展開、派手なアクションがあるわけじゃないのに。そしてエンディングの引きがまた、あんなシメを見せられて続きを気にするなというほうが無理な注文である。
全三部作の第一部でここまで絶賛して良いものかと思いますが、同人ゲームというカテゴリに押し込めておくのが本当にもったいないというか普通に映画とか漫画とかノベライズとかメディア展開誰かしませんかこれ。というか見てみたいです。
音楽もなかなかの名曲揃い、この記事もエンディングテーマをサウンドモードで聞きながら書いてます。サントラは即売会のみなのかぁ勿体ないなぁ。
あえて弱点を挙げるなら、特に序盤ですがどうしても文体が小説的というかちょっと読み返しが多めになりがちなのが気になりました。立ち絵で流せるところも地の文でやってしまうところもあったので3行表示スタイルよりも画面全体で文を流しても良かったかもなあと思わなくもなく。それも中盤以降は特に気にならなくなったので本当に些細なことですけど。
あとこの手のゲームがすっかりご無沙汰だったのもあるけど、キー操作ガイドがゲーム内で調べられないのはちょっと不親切かも。まぁノベルゲームにそこまで複雑な操作はないですが。唯一バックログの出し方がわからずに思わずプレイ中にググってしまいました。
ちなみに、バックログ呼び出しは“Shift+↑”。
本当は昨年に買ってたのですが、まぁなかなかタイミングがなく積んでしまってたわけでして。このたびMacBook買ってVMwareを導入した(導入の半分はゲームしたかったからw)ので動作確認ついででプレイを始めてみた次第。
なお、表題にepisode.1とありますが、年間1本ペースで最終的には全3部作となる予定だそうで。現在episode.2が鋭意制作中、早くも続きが気になって仕方ない作品ですが……もうすぐ夏だってのにep.2の情報が全く入ってこないのはwhy? まさか延期なの!?
関連リンク:
WORLD END ECONOMiCA |公式サイト|Spicy Tails
支倉凍砂氏ロングインタビュー。「WORLD END ECONOMiCA」から「狼と香辛料」,そして次回作の話題まで,あれもこれも語りつくしてもらった
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/02
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