交感ノートは喋らない :★★★★☆
Webコミック作家HERO氏が自身のウェブサイト「読解アヘン」で発表したコミックをまとめた短編集二冊目。独特の横長のコマ割がまるで自主制作のショートフィルムを観ているような感覚、淡々とした作画の中に繊細な心の機微を描く。
前作「7と嘘吐きオンライン」でもその繊細な感性で描く登場人物達の心の動きに強く共感し、惹かれ、続く本作も早速購入。…といいながらも、積ん読の山に埋もれやっと先日発掘し読了した次第。
なんというかたぶん、この人の描く主人公達ってちょっと内向的な部分があって、それが僕の心の琴線に触れまくるんだろうなぁ。
ちなみに、★が4つなのは本になったときにコマ割が4コマずつに分断されてリズムがちょっと崩れてるんじゃないかと思うので、本の良さはそれでとても良いのですが。なお作品自体の評価は★×5。
以下感想っぽいメモ
「交感ノートは喋らない」
表題作。小学校時代たまたま隣の席になった主人公とヒロイン。いつからともなく始まった授業中のメッセージ交換から始まる物語。
秘密の共有ってやっぱり楽しくてワクワクで、しかもその相手が女の子ならそりゃあ、ね。でもそれだけじゃ先へは進めない、怖くても苦手でも伝えないといけない大事なことがあってそれは文字だけでは不足なんだな。たぶん文字だけでも言葉だけでもだめなんだ。
「僕のロスト日記」
姉と兄と主人公が登場人物。ある日湧き出したその気持ちは果たして恋なのかそれとも。
当たり前なんだけど兄姉はいつまでも年上で人生の先輩で先を行って、同じラインには立てなくて。それ以上にどう頑張っても叶わない想いってのもあって、それ以上に一つ屋根の下で寝食を共にする家族なんだ。
自分の感情に振り回される中で何が一番大切な想いなのか。本作は姉弟という関係であるがこれって別に友達だって同じことだよね。大切な人を思ってどう行動するか、自分の欲と向き合うってのはなかなか大変だなぁ。
「微熱ディスプレイの世界」
引きこもりの男に間違えて届けられた1本のエロゲーから始まる話。彼らの間にあるのは薄いガラスの板1枚、しかしその隔たりはとてつもなく分厚い。
言ってしまえば「情が移る」ってヤツなんだろうけど、情が愛情になるなんてのは当然あって、それは別に生身の人間には限らないんじゃないか。もっと言えば、彼らは図らずも最初から本音をぶつけ合える関係だったのは幸運だった、のかもしれない。
つーかうちのパソコンのディスプレイにもひょっこり女の子が現れてくれたりしませんかね。
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