魔法少女とまどか☆マギカに見るコミックス展開手法

魔法少女まどか☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
蒼樹うめ×虚盧玄×新房シャフトという豪華なスタッフを揃え放送前から話題の「魔法少女まどか☆マギカ」。その公式コミカライズの第1巻が発売されました。
魔法少女という甘いキーワードに包まれながら、蓋を開けたら先の読めないハードなストーリーがさらに大きな話題を呼び、秋葉原Amazonでは即完売、全国的にも品薄ということでアニメの注目度の高さが伺えます。

コミックの内容は美術設定等に若干の違いがあるものの、テレビシリーズ1話から4話までのストーリーを忠実にコミカライズと言った趣。アニメのストーリーのおさらいにちょうど良い感じです、またアニメとの違いを見つけて愉しむというのも一興かと。

TVアニメとの同時刊行という新しさ

発売された第1巻ではテレビシリーズの1話から4話まで。今後、3月、4月と3カ月連続でシリーズ全話を追いかけるという刊行スケジュールとなっています。

個人的にはこの刊行スタイル、かなり面白いと感じました。

アニメとコミックを繋げるいくつかパターン

最も多いのはすでに連載されている原作コミックがあって、それをアニメ化する場合。いわゆる「原作付きアニメ」というやつです。場合によってはライトノベルだったりすることもあります。

もうひとつは、オリジナル企画のアニメがあってそれをコミカライズする場合。このパターンにもいくつかのバリエーションがあります。

  • アニメのストーリーに則り忠実にコミカライズ
  • アニメのストーリーを端折って1冊あるいは上下巻程度にまとめる展開
  • アニメの設定を踏まえてオリジナルストーリー(外伝)として展開

などがいわゆる多メディア展開手法としてよく使われていると思います。

オリジナル作品、従来の多メディア展開手法

いずれにせよ、メディア展開としてコミック版を発売する場合。出版社が決まり掲載誌が決まり、アニメ放送開始に先駆けて連載が始まり、放送中前後にコミック1巻を発売するというのが基本だと思います。

連載スピードの差

しかし、雑誌連載を経てコミックスとして発売するにはコミック一巻分になるまで何カ月か連載しなければなりません。深夜アニメは基本的に3カ月、長くても半年で終了します。ここに展開スピードに差が生まれ1年以上遅れてコミックスが完結するということも珍しくありません。

最も新鮮なタイミングで売る

翻って「魔法少女 まどか☆マギカ」。従来のコミカライズ手法から離れ、掲載誌なし完全書き下ろしとして刊行、しかもタイムラグなしでアニメと歩調を合わせるというかなり特殊な刊行スタイルとなっています。

ネットの普及により情報の流通スピードが劇的にスピードアップした現在、たとえそのクールの話題を独占したアニメといえども新番組が始まるとあっという間に忘れ去られ「おわコン」などと揶揄されてしまう現在において1年以上かけて連載を続けては明らかに「遅い」と言わざるを得ません。

そう言った現状でコミックを確実に売るには放送中にどれだけ数を捌けるか。30分CMとしてのアニメをどれだけ最大限に生かせるか。という視点が大切なんだと思います。

芳文社だからできること?

一般的には掲載誌も買ってもらって、コミックも買ってもらうという意図もあり連載をするわけですが、長く連載を続けてコミックの売り上げが右肩下がりになるくらいなら雑誌の売り上げを捨ててコミックで売り切るというのは、もともと雑誌それぞれのの発行部数が少ないと思われる芳文社だからできる手法と言えるかもしれません。

とは言え芳文社はぬかりないです。
3カ月連続でコミカライズした後に同じく書き下ろしの外伝コミックス「魔法少女おりこ☆マギカ」を順次刊行し、まんがタイムきららフォワードでもしっかりオリジナル外伝ストーリーとして「魔法少女かすみ☆マギカ」を連載。テレビ終了後も鮮度を落とさないためにかなり多面的な展開をしている点も見逃せないでしょう。

コミックをいかに売るかという点で最もチャレンジングな出版社なのかもしれません。(アニプレックス主導の商品展開かもしれませんが)

この作品だからできること?

確かに元々の話題性の高さや豪華スタッフによる作品への自信あってこその盛大なプロモーションなのは間違いないです。しかし、アニメに限らず娯楽があふれる現在、オリジナル作品を本気で売るならこれくらい大胆かつ緻密に計画を立てないとその他多数に埋れてしまうのでしょうね。

BDを買わない層に訴求する

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アニメそのままの内容をコミックにしたらBDが売れなくなるんじゃないかと思うかもしれませんが、そんなことはないと思います。価格帯が違いすぎるので買う層は重ならないか両方買うことになるのではないでしょうか。むしろ同時刊行でアニメの副読本として機能し作品のファンを増やす効果の方が大きいと思います。
場合によっては、放送の見逃し対策としても機能するかもしれません。

新たなプロモ手法として定着するか

個人的な予想ですが、今後オリジナル企画のアニメーションはこの手法で展開する作品が増えてくるのではないかという気がします。
原作枯渇と言われて久しいですが、今後増えるであろうオリジナル作品を盛り上げる手法として定着するか。魔法少女まどか☆マギカがひとつの試金石になるのではないでしょうか。

魔法少女まどか☆マギカ 公式サイト

魔法少女まどか☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

魔法少女まどか☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

魔法少女まどか☆マギカ (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

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